超高速カーフェリー  オーシャンアローのすべて

はじめに1.SSTHとは2.開発の経緯3.一般配置4.スペック5.外観設計
6.船体構造・材質7.船体艤装8.機関部9.電気部おわりに|    コメント
IHIにて建造,全アルミ合金製船体,MTU社製高速エンジン搭載
超高速カーフェリー
オーシャンアローのすべて

はじめに

オーシャンアローイメージ本船は熊本フェリー株式会社及び、運輸施設整備事業団の注文により建造された、超細長双胴船SSTHの70m級カーフェリーの第1番船です。
1997年3月に起工、同年11月進水し、1998年3月に船主に引き渡され、現在、熊本~島原間に就航しています。これまで片道1時間の航路を半分の約30分に短縮しただけでなく、観光航路として利用される方にも十分満足いただけるよう、外観や内装のデザインに意匠をこらしています。


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1.SSTHとは…(Super Slender Twin Hull:超細長双胴船)

SSTHとは、船体の没水部が競技用ボートのエイトのように極めて細長い二つの船体を並べ連結した双胴船です。
船体を細長化することにより、高速航行時の造波抵抗を低下させて所要馬力を小さくしました。優れた波浪中の縦揺れ性能と曳き波が小さいという特長を有します。
在来船と同じく浮力で船体重量を支持する排水量型であるため小型高速船から大型高速船までさまざまな仕様に対応でき、乗り心地の良い高速カーフェリーに適した特徴を持っています。

SSTHイメージSSTHイメージ

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2.開発の経緯

SSTHは所要馬力が少なく、乗り心地の良い高速カーフェリーに適した船として、IHIと日本のアメリカズカップヨットの設計で有名な東京大学 船舶海洋工学科 宮田秀明教授と共同で開発した船型です。
この共同研究では単胴部の抵抗を最小にする船型の研究、双胴間の造波干渉を低減する双胴間隔・船型の研究、動揺を抑える船首形状の研究、操縦性能の研究、及び推進器の研究などを主体に、膨大な数値解析、水槽試験を実施しました。
SSTH船型は全く新しいコンセプトであるため、実海域での速力性能、耐航性能、操縦性能及び構造強度等についての総合評価を行い、またこれを実船に反映させることにより信頼性を高めることを目的として全長30mの実験船、SSTH-30を建造しました。
速力試験、操縦性試験、耐航性試験を行い、回航時に波浪中の抵抗特性等を計測し、所期の性能が確認されました。全長30mでありながら1~2m程度の波を難なく乗り越える耐航性能には特筆すべきものがありました。
1992年にこのSSTH-30の建造及び実海域での諸試験から得られたデータは、大型・中型のSSTHカーフェリーやRo-Ro船の試設計にフィードバックされています。「オーシャンアロー」の基本的な船型はこの「とらいでんと」をベースに設計されています。

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3.一般配置

本船の一般配置を図(左下)に示します。
上甲板には2層の旅客スペースおよび操縦室を配置しました。
上甲板の下方は車両スペースとしました。
大型バス9台が搭載可能です。車両甲板はピラーレス構造を採用して車両搭載の自由度を高めて、使い勝手をよくしました。

オーシャンアロー一般配置図オーシャンアロー車両甲板イメージ

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4.スペック

  • 全長 : 72.09m
  • 全幅 : 12.90m
  • 深さ : 4.50m
  • 満載喫水 : 2.05m
  • 載荷重量 : 204t
  • 総トン数 : 1,687t
  • 試運転最大速力 : 31.3ノット
  • 航海速力 : 30ノット
  • 資格・航行区域 : JG第二種船・平水区域
  • 旅客定員 : 430人
  • 車両搭載 : 乗用車51台(または大型バス9台)
  • 主機関 : MTU16V595TE70L(2基)
  • 連続最大出力 : 5,338PS×2基
  • 推進器 : 固定ピッチ プロペラ×2基

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5.外観設計

田中徹氏イメージ本船の外観には、「熊本~島原間」の観光ルートに就航する高速船にふさわしいイメージが要求されました。
船の設計者、エクステリアデザイナー(田中徹氏:右写真)、及び船主との共同設計により、従来の船舶にない流麗な外観に仕上げました。
曲面とシャープなラインを多用したスマートな形状と、有明海をイメージした鮮やかな青を基調としたカラーリングによって、観光などで本船を利用される方に限らず港を訪れる方にも美しい姿を楽しんでいただいています。

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6.船体構造・材質

アルミ合金イメージ高速船は船体重量軽減のためにアルミニウム合金を使用することが多くなります。本船も主船体・上部構造全てにA5083P-0を用いています。また、可能な限りプレリブ材(板H321と骨H112の組み合わせ)を使用しています。
構造様式は主船体および上部構造とも縦助骨方式を採用しました。
本船は積載車両の搬入・搬出を容易にするために車両甲板にはピラーを設けていません。従って、強度面にも増して振動面での検討が重要です。最新の解析ツールと技術を用いて固有振動計算を実施し、本船の主要起振力との共振状態を回避しました。
建造にあたっては、溶接品質確保のため大型アルミ合金船用の建て屋を整備し、主船体の建造は全て屋内作業としました。

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7.船体艤装

オーシャンアローイメージ上甲板客室部分前後に係留場所を設けました。前部の係留スペースには係船・揚錨機×2台、係船機2台を、後部の係船スペースには係船機3台を配置し、スペースも十分とって省力化を考慮しています。
前述の通り本船は外観の美しさを重要視しているため、救命器具を除く艤装品の塗装色はデッキと原則統一するなど十分な配慮をしました。

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8.機関部

機関部イメージ本船は双胴船であり、しかも細長船型をしているため主機関はこのスペースに収めるために小型軽量高出力の高速ディーゼル機関を採用しました。主機は防振ゴムにより弾性支持され、振動はよくおさえられています。
各胴の機関室の幅は決して広くないが、配置に十分工夫して点検等の作業に支障の無い様にスペースを確保しました。各舷機関室に設けられた監視モニターテレビによって操舵室において常時監視できるようにしました。
主機関の点検等に本船から取り出せるように、車両甲板の主機上に2箇所と、上甲板後部の中央に1箇所とにハッチを設けました。

【機関部スペック】
  • 主機関 : 
    4サイクル高速ディーゼル機関
    MTU16V 595 TE70L型×2基
    連続最大出力 5,338PS/1,750rpm
  • 減速機 : 2基
  • プロペラ : 固定ピッチ×2基

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9.電気部

操舵室イメージ本船の主電源装置として左右各舷の機関室にディーゼル機関駆動の発電器を1台(計2台)装備しました。
常時は各1台運転で、バウスラスタ使用時のみ2台並列運転としています。




【電気部スペック】
  • 発電器 :
    290kW/1,800rpm/AC450V/3サイ/60Hz×2台
  • 変圧器 :
    450/105V/3サイ(一般用) ×2台
    450/215V/3サイ(空調用)×1台
  • 蓄電池 : DC24V/200AH×1組
  • ジャイロコンパス : 1式
  • レーダ : 1式
  • GPSプロッタ : 1式
  • 風向風速計 : 1式
  • 水深計測機 : 1式
  • 船内放送装置 : 1式
  • 操船指令装置 : 1式
  • 監視用ITV装置 : 1式
  • VHF無線電話 : 1式
  • 船舶電話 : 1式
  • 気象用ファクシミリ : 1式
  • 船内TV放映装置 : 1式

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おわりに

オーシャンアローイメージ熊本県と長崎県を結ぶ新たな動脈となった「オーシャンアロー」。
人やものの交流による地域のさらなる発展のために、今後の本船の活躍が期待されます。
SSTHの30m客船、70m級カーフェリーの建造で多くの技術を蓄積し、SSTH船型を用いて今後のさまざまな高速海上輸送の要求に対応できると確信しています。


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「速さ」と「快適さ」と「低運賃」をコンセプトに生まれたカーフェリー

( コメント: 熊本フェリー(株) 代表取締役社長  井手 雅夫 )
「速さ」へのこだわり
井手雅夫熊本と島原の距離は21キロです。東京湾の川崎~木更津間とほぼ同じで、有明海を迂回する道路に替わり、海を横切る短絡航路です。一般的な内航航路の船は14ノット(時速約26キロ、1ノットは時速1.852キロ) 程度で、この航路では約1時間かかります。これでは自動車に比べていかにも遅いです。導入前に行ったアンケートで『1時間では長いが、30分なら良い』という意見が多く、それに対応し30ノット(時速56キロ) の高速船にしたのです。
「快適さ」へのこだわり
熊本市には長い間、港がありませんでした。1993年に熊本新港のフェリーエリアが一部開港したものの、地元の人々にとって海は遠い存在でした。私たちはオーシャンアローが、気軽に船に乗りレジャーを楽しむきっかけになってほしいと考えました。ですからデザインも今までのフェリーのイメージを打ち破りたいと思い、美しい外観はもちろん、インテリアでも座席を特注するなど、斬新で豪華なものを目指しました。
更なるこだわり「低運賃」
しかしながら、いくら性能が優れていても、高い料金では、是非ともご利用くださいとは申せません。そこで、低運賃にも主眼を置き、企業努力でこれを実現いたしました。一人でも多くのお客様が、船旅の醍醐味である快適なクルージングを楽しんでくださればと願います。

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